191号-2013.6.25

[ 2013.7.2. ]

191号-2013.6.25

 

今年の新卒採用は男子2名だった。当社では特に採用人数を決めておらず、原則毎年8月20日~31日に行われるインターンシップ生の中から、入社にいたる学生が増えてきた。公募も含めて面接は6名実施したが、特に意欲があると思われるS大卒の2名になった。
最近は、大学の就職支援活動もかなり徹底されており、履歴書の書き方、面接の態度や応答も一定レベルにある。しかし、想定される質問事項以外にはかなり戸惑いや本音が出る。
「最近読んだ本で印象に残ったのは?」⇒「それはどこの部分か?」⇒「その理由は?」とここまでは想定範囲になるが、「同じ著作者の他の本は?」「関連する他の著書は読んだか?」となると結構詰まる事になる。特に学業の程度を見るのは、「得意科目は?」⇒「誰の教科書で?」⇒「どこに興味をもった?」⇒「それを当社でどう生かすつもり?」まで来ると結構苦しくなる。
別に相手を追い詰めるのが目的ではないので、その辺で終わるが、想定外の応答にでる態度を見ている。賃貸管理業では、想定外のクレームや怒気をはらんだ要望がよく出てくるので、どれだけ冷静に対応できるかが、ポイントになってくる。勿論、彼らの社会経験は物販や飲食、居酒屋レベルのバイトと、若干22~3歳の若者なので、それなりのレベルの答えが引き出せれば問題はない。新卒に限れば難関大学出身者はまず応募してこないので、持っている知識の有無より、サービス業に向いているか、「伸び代」はありそうか、で判断している。

 

 

 

当社では常識テスト、性格テストを課し一定のレベルにあれば面接となる。その面接も第一次~3次までとなっている。第1次は店長・主任クラスが担当し、第2次は管理職・役員、第3次は社長となっている。事務系はその採用過程でほぼ間違いがないが、こと営業系は全くあてにならない。勿論面接は2人以上で行うが、採用時の成績と入社してからの実績が連動しているケースは殆どない。通常の基準である「協調性」「知識習得度」の判断は営業では無意味かもしれない。
「自己中心的」で「協調性がない」社員が、入社後素晴らしい成績を上げるケースも多い。性格.価値観テストも併用して行っているが、面接では窺い知れない深層的側面が判明する。まして一時の面接で将来を判断するのは神業だし、応募してくれた縁を大事にしたい。

この「E社の性格・価値観テスト」は、①性格特性、②創造的思考性、③コミニュニケーション力、④エネルギー量、⑤ストレス耐性、⑥キャリアタイプ指向性、⑦職務適正、のポイント獲得数から、①総合評価の偏差値、②定型的業務・非定形的業務の適性、記憶力、言語力、計算力、計算応用力、直観力、言語応用力、推理力の判定をする広範囲な判定基礎資料を提供するものだ。その結果は棒グラフとレーダーチャートで示される。

この手のテストで一番問題なのは、その回答の一貫性(真剣に回答しているか)と虚偽性(自分をよく見せようとする意識)なのだが、その辺も抜かりなく得点のバイアスをかけている。このテストを採用して2年目に入るが、その結果は良好で、ほぼ予想される勤務成績を出している。勿論それで解決かというと、そうではなく、その個人特性を踏まえた社内指導が有為なものとなっているので、社内教育体制如何で「金の卵」に化ける事にもなる。

この社内教育体制構築が中小企業では社員の質を上げる最重要課題で、頭の痛いところでもある。社内を振り返ってみれば、まさに当社の一番の問題は、新人に直接影響がある4~6年生のスキルが思ったより低レベルだった事である。それ以外の年齢層でも問題がないとは言えないが、特に一番活躍しなくてはならない年齢層の強化が将来の我が社を決定づけるからだ。当社が考えているスキルとは、経験に応じた業務知識は勿論、後輩育成、他部門との調整能力、業務改善能力である。多くの社員が与えられた業務はそれなりにこなすが、それ以外の関連する業務、配属された後輩の指導、担当業務での問題意識がないのだ。目には付くだろうが行動に表れないのだ。

その根底には、言い出せば「自分が貧乏くじを引く」とばかり、現業の業務に唯々諾々と作業を続けている日常がある。それを許している職場も問題だ。職場にも活気がなくなり、後輩にも悪影響が出てくる。その改善策として業務のローテーション制度があるが、その社員の移動がグループにマイナスになる為、リーダーが離さない結果につながった。作業が「見える化」されていない、その社員の頭の中にだけ例外事項や顧客特性がある為、他の社員が手掛けるとミスを誘発し、結果的にその社員の移動が困難になっていた。部分最適だが全体不具合なのだ。これでは組織の総合力は発揮されない。

更に、競争意識を高める為地区制をとっていたので、業務の重複からの非効率性も無視できなくなった。同じ内容のデータを入力するにも手順が地区毎に異なっていたり、追加事項や特約も社員の営業力、折衝力レベルにより、有ったり無かったりして統一されていなかった。それにより、社員教育上混乱が出ていたし、その煩雑さもミスにつながった。そこで2013年6月から、仲介事業部、管理受託事業部、管理事業部、アフター事業部の4部制とした。各事業部が業務フォローの統一、社員ローテーションを行い、社員教育にも責任を持ってもらう事になった。勿論今まで店単位だった損益も事業部単位に変更した。本社も、新卒研修(6ヶ月)、新人教育(1年)中堅社員教育(3年~5年)、社長塾(主任以上)と各々カリキュラムと課題を組んだ。新卒、新人社員には夫々2~3年先輩を付けメンターとした。経験や勤務年数により各外部セミナーや研修受講も指名制にした。

そして社員毎に研修履歴を作り、必須研修や選択研修を明確にして各社員間のバラツキをなくすようにした。従来は希望者のみのセミナー参加や研修であったが、それではいつまでも社員格差が大きく問題も大きかった。費用の問題や意欲のない社員を無理やり行かせるのは、かえって無駄が多いと考えていたが、ある程度の強制がないと短期間に社員スキルアップができない事が判明したからだ。今までは「会社が環境を整えるだけで、後は社員自身の問題だ」と切り捨てていたが、やはり「牛を川に連れて行くだけではなく、強制的に飲ませる事も必要」になった。どんなダメ社員でも、会社の名刺を持ち、会社の代表として顧客に接するには、会社の名誉と評判を落とさぬよう強制が必要と、従来の方針から180度舵を切らざるを得なかった。背景には「解雇制限法理」が段々厳格になっており、現有社員を早期に優良な戦士に育てなくてはならなくなった。パワハラ・セクハラと従来よりも雇用環境や教育環境にも規制がかかり、育成手段も強制圧迫よりも「おだて」「褒め」て、本人の自主性に頼るしかなくなった。目に見える強制ではなく、「自分自身の為に」と欲望・功利に訴えるしかなくなった。面接も「将来どういう生活を考えているか」が判断の基準になる。その意味ではE社のテストは有効ではないかと見ている。いずれにしても、その結果は数年後になるが、まさに人材は投資だと改めて認識した。                

社長 三戸部啓之