182号-2012.9.25

[ 2012.9.29. ]

182号-2012.9.25

 

今年は新卒4名を採用し、今月末で6ヶ月が経過する。内1名が女子社員で3名が男子社員だ。今までは毎年定期的に新卒採用はしていなかった。

初期教育コストが高く、戦力化するまで長期間要するからだ。社内の体制も「新卒アレルギー」が強く、教育体制も未整備で積極的ではなかった。2012年7月16日の日経新聞で取り上げられたように「大学新卒者に求める人材像」でも「質問に的確に答えるコミュニケーション能力が80.1%」「自己アピールの中身54.4%」があった。当社でもマニュアル通りの答えしかできない、学生時代に学んだ中身がない、応募者が多かったが、採用後それらのハンデが現場に大変な労力と負担をかけることになった経緯があったからだ。しかしそれなりのハードルを越えた10年以上勤務の新卒社員は2名だけだが今や貴重な戦力となっている点も見逃せない。

そうこうしている内に社内の人的構成は、50歳以上10%、40歳以上65%、30歳以上20%、30歳未満5%と歪な構成になってしまった。まさに日本の高齢化社会の縮図であり、戦闘(生産)集団としての維持は困難になってくる。さらに入社年数から言えば10年以上の経験を持つ社員が10%で、しかも殆どが40歳以上である。他は5年未満にしか過ぎない。つまりその10%の社員が当社を支えている事になる。40歳以上のベテラン組はそれを補う知識や交渉力はあるが、記憶力、体力、持続力の衰えは如何ともしがたい。

特にフットワークが他部門以上に必要とされる賃貸仲介は男子社員の場合30歳をピークにその件数は下降線をたどる。旬の時期は経験3~6年で25~30歳という短い期間だ。この期間に賃貸仲介のスキルを身につけ、管理職としてのスキルを体得するか、他部門で体得したスキルを生かし社内に活路を見出せないと当社では更なるステップアップは望めない。ただ、女子社員の場合の旬は25~55歳と男子社員に比べ格段に長く、経験に合わせて磨きがかかり旺盛な闘志と極め細かいフォローは特筆ものだ。当社でも多くの賃貸仲介の女子社員が居り、実績が確かなのは殆どが45~55歳のパート社員だ。そもそも入社前からの意欲が違う。殆どが宅建取得後応募してくるし、子育てを通してのストレス耐性もある。新卒女子の腰のフラフラした温室育ちとは違い業務信用度も高い。当社の若い社員がそれらのベテランを使う難しさもあるが、即戦力としての意味は大きかった。そのような経緯から、当社の社員構成は歪なものになってしまった。

そこで5ヶ年計画を策定した。
毎年新卒男女2~5名、35歳未満の中途採用3~5名の計10名を計画した。35歳以上の男性社員は原則として採用せず、特に管理職としての即戦力を発揮できる方のみ選考の土俵に上げるよう変更した。それが計画通り実施できれば2017年には40歳未満の中堅社員が50%になるはずだ。若々しい行動的な組織に変身する。

今回6月の第一回中途募集では74名の応募者のうち、書類選考で60名が不可となり、第二次面接迄進んだ応募者はわずか4名であった。その結果採用したのは35歳以上0名、25歳~30歳で2名となった。合わせて実施した来年度新卒応募者は6名のうち内定者1名である。
従来なら、当然採用していたレベルの応募者も今回は不採用となった。今回は増員目的も明確にした。増員要望部署からの要求を直ぐ呑まず「新規事業要員であること」「業務効率が限界か」「各部門利益の吸収範囲内か」がクリアーしている事が条件と成った。さらに面接担当者は「採用した社員を最長3ヶ月の試用期間内で判断し最悪の場合、雇用止めを自らできる事」を課した。今までは採用者と雇用止めをする社員が異なり、採用を安易に考えていた為、教育責任や雇用責任の自覚が薄かった。

その意識の変化が今回の採用結果に大きく響いたと思われた。
負の面も無視できない。将来の可能性判断は数十分の面接では判断できない。内勤社員なら数名の面接者の判断で大きな狂いはないが、こと営業系社員では困難で、良かれと思ったが「泣かず飛ばずの社員」であったり、「癖があるが当社でドウかな」と判断した社員が入社後素晴らしい成績を残してくれたりしているからだ。
試用期間をもっと法律上弾力的に運用してくれれば、採用側も入社後の勤務実績を確認できる。3ヶ月の試用期間も場合によっては意味がなくなるような「解雇制限」があれば、企業側は採用に慎重にならざるを得ない。制度的には「トライアル雇用」や「JOBカード制度」があるが、応募者側の心理抵抗もあるようだ。当社でも数例しかないが、採用成功例もあり制度の当局のPRと積極的運用が望まれる。

先の新卒4人だが、早6ヶ月にして各人にかなりの差が出てきた。
採用時点で夫々ハンデを与えており、100㍍競走で例えれば、スタート時点で50㍍先に居るもの、スタート地点にいるもの、まだスタート地点までいかないものがあった。性格テストやスキルテスト、常識テストで基準以下でも生い立ちや大学生活での経緯を見て採用した社員もいる。当然「何時までに」「何を」「どのように」を指示しており、倍速の時間短縮を要望したものも居る。夫々の先輩メンターが毎日指導しているが、所定の効果が中々発揮できないものも居る。漢字力と文章力をアップさせる為に、毎日主要紙のコラムを筆記させ提出させているが、遅れがちで期日管理ができないものも居る。
自分の子供でも満足に育てられない親が多い中で、生活環境も違い価値観も違う他人を一人前の社員に育てるのはコストや労力を考えてみても企業には大きな負担としてのしかかる。教科書的な綺麗ごとで言えば「白地に企業理念を染めていく」ことになり将来的には素晴らしい純粋培養社員ができるのは、会社経営から見てもDNAを存続させ効果的だ。

10月には入社6ヶ月目の「社長面接」がある。ここで新卒社員には「当社に残るか」という最終的な進路を確認されることになる。不幸にして「雇用止めの選択肢」を取らざるを得ないレベルの社員も出てくるかもしれない。勿論雇用の継続を前提にしたものだが、「契約社員」「待遇の見直し」や最悪の場合「自主退社」もある。試用期間というお見合いをした上で「同棲生活」を試みたが、性格相違、浪費癖発覚、不倫、生活観のちがいによる「婚約解消」になったことになる。「離婚」という大きなダメージがない内にリセットしようとするものだ。法的運用面では様々な問題をクリアーしなくてはならないが、原則は相互理解と生涯リスクの事前予防だ。社長の使命は「会社の存続」「職場環境のレベルアップ」だと考えている。不要分子を早めに排除し、不満分子の沈静化と旺盛な戦闘意識の維持だ。組織は日々変化する。過去の成功体験も、他社の成功事例も参考になるのは一瞬だ。磐石と見えた組織が簡単に崩壊する例は枚挙にいとまがない。

会社経営とは「学び続ける」ことだ。現場からのサインを的確に感知し問題意識を持つことだ。私の定年は自分の描いた組織ができた年だとしている。2017年がその年になる。
今居る社員の成長が「社長人生」の何よりの餞(はなむけ)になる。
                                     社長 三戸部 啓之