253号-2018.8.25

[ 2018.8.1. ]

253号-2018.8.25

「例の仕事どうなっている?」
「あっ、進めているところです」
「どこまで進んでいる?」
「すみません、・・・あまり進んでいません」
何故進んでいないのかと聞いてみると、明確な理由が答えられない。
いつまでにできるか聞いてみると、「明日までにやります!」と答える。
「なら早いうちからやれよ!」と言いたくなる。無計画性と根拠のないプライドが彼らの特徴だ。

つきっきりで指導しないと前に進まないし、だからと言って指導した分だけ成長してくれるわけでもない。1つ教えたら10覚える成長の早い人材も、いくら教えても穴の空いたコップのように流れ出してしまう成長の遅い人材も、仕事にかけている時間は同じだ。
成長の早い人材は、成長の遅い人材よりも2倍の時間、学習しているわけでもない。
何がこの2人の差を生み出すかというと、一人の時の仕事の仕方だ。

成長の早い人材は常に、目標達成のために時間を使っている。そして達成できなかったときは、原因を自分なりに考え、次の対策を考えている。

一方、成長の遅い人材は言われた通りに、言われた事だけをやろうとしている。達成すべき目標やゴールすら、まったく設定せずに仕事を始めている。だから何も学ばないのだ。振り返りの方法を学び、失敗から学ぶ習慣をつけるほかない。ゆとり世代の特徴でもある。暗記一辺倒で、自ら考える訓練がされていない。答えも表面的だ、熟慮という事がない。更に失敗を極端に恐れる。

とはいっても、すぐできる事ではない。哺乳類には自己防衛本能がある。失敗が自分の生死を分けるからだし、群れの団結や維持に支障をきたすからだ。人間も同じだ。リスクを恐れ失敗を恐れるから挑戦しようとしない。前例踏襲なら言い訳もできるし、そもそも自尊心が傷つかない。

しかし「失敗から学ぶ!」事は、子孫が淘汰から逃れる唯一の手段だし進化の源泉だ。

ドイツの名宰相であるオットー・ビスマルクの言葉で「賢者は歴史から学び愚者は経験から学ぶ」と解し方によれば正反対の言葉でもある。確かに、個々人のせまい経験から導き出された判断よりも、多くの人々の経験を広く集め、比較検討し、客観的な事実として定着した歴史を元にして判断した方が間違いない。
「三人寄れば文殊の知恵」とも言う。集合知による判断は個人の偏狭な判断力を大きく上回るというわけだ。歴史は不変の真理であり、経験は個人的体験に過ぎないので普遍性を持たないからである。ここでのポイントは「字面に拘泥する」のではなく「学ぶ」という姿勢だ。

「アインシュタイン」は248、「ダーウィン」は119、「フロイト」は330の論文を書き「エジソン」は1093の特許をとり、バッハは1000曲以上も作曲し、ピカソは2万以上の作品を残している。この中で我々が見たり聞いたりしているのはホンの一部だ。このように、天才達ですら多くの挑戦と失敗を続けその中で傑作を生んできた。しかも世間に認められる迄の雌伏期間も長い。それに耐えてきた精神の強靭さが尋常ではない。それが近代社会の礎を作ってきた。

マイクロソフトのビル・ゲイツも言っている。「成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ。失敗にどう対処するかで会社が社員の良い発想や才能をどれだけ引き出し、変化に対応していけるかがわかる。どんな会社にも、ミスをして、それを最大限活かしたことのある人が必要だ」

誰でも失敗はする。その失敗を自分で生かす人は少なく、それで挑戦をやめてしまう。まして組織として生かすことが出来る人はもっと少ない。

トーマス・エジソンのように、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ」と言う楽天的な不屈性は異常者に近いが、同じ彼が言う「ほとんどすべての人間は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。勝負はそこからだというのに」はストンと凡人の腹に落ちそうだ。

失敗から学ぶという事は、まず原因追及が必要だ。

「何故目標を達成できなかったのか?」「どうすれば、次はもっと上手にできるか?」という事を考え行動する事である。そこでPDCAといわれる管理のサイクルが手段としてよく用いられる。仕事の効率性を高める理論で、Plan(計画)、Do(実行)、Check(振り返り)、Action(改善・処置)の頭文字を取って命名されている。より仕事のスピードアップを図るために最近では、『PDCA』の順番を入れ替える事もある。Check(振り返り)→Action(改善・処置)→Plan(計画)→Do(実行)の順で進める。「まず、『Check(振り返り)として現状はどうか?』を考える。続けて『Action(改善・処置)、何から改善していけばよいのか?』を整理する。そのうえで、Plan(計画)、Do(実行)と続く。

実は、失敗は始める前から分かっている事が多い。つまり、現状把握がされていないから、出発点においてプロセスが抽象的なのだ。裏付けがキチンとされていないから、目標の設定も単なる希望的観測で終わってしまう。行き当たりバッタリで運任せ、成り行き任せで予測ができない。当然プロセス管理もできないから、途中での軌道修正や点検もなおざりになりやすい。管理データの入手も不完全だ。目標自体も「見える化」が出来ていないから、結果の検証もアバウトにならざるを得ない。目標は羅針盤に例えられるが、行く方向が明確でなければ無駄も多いし、そもそも目標に到達できない。

目標として挙げる「報連相するように努める」「トークを磨き営業力を強化する」「メンバーの業務内容を把握する」は、往々にして手段が目的になっている。順序が逆だ、目的を明確にし、其の為に到達する手段がある。この手段こそ『PDCA』を回すことができ、見直しと点検が可能なのだ。

目的地が曖昧な状態では、まっすぐに進むことができないし、どうしたら良いかも不明だ。正しい目標を立てる事で、最短距離で進めるようになり、成長がぐっと早くなり効率もいい。自分の行動を決める時に、「なぜその行動をするのか?」という根拠を常に明確にする癖がつき、それによって、一つの仕事から得る学びが格段に多くなるわけだ。

又、処理事項の漏れもなくなりスピードも速くなる。これは『5W1H』思考と言う考え方でもある。知っている社員も多いと思うが、キチンと身についている社員は少ない。

Why(何故)、Who(誰に)、What(何を)、Where(どこで)、When(何時)、How(どのように)を言う。トヨタ方式で有名な「なぜを5回繰り返せ!」は事の本質である「本当の原因」を見つけなければ真因がわからないとも違う。ここでは何故が出発点になる。「やる理由を見つける」「確認する」ことで処理する内容が正確になり段取りもスムーズになる。

「やる理由」が明確になれば、関与するメンバーのモチベーションもはっきりする。役割分担もそれに伴う責任も明確化し、組織としても強固になる。東芝、神戸製鋼等の大手名門企業の不祥事が続いている。かって日本ブランドの一翼を担った品質管理の優等生だ。ISOやデミング賞の受賞対象会社であり組織は盤石だった。仰ぎ見るような優秀な社員も多かった名門企業の劣化が残念だ。原因は色々あるが、「現場軽視による現場の劣化」だろう。様々な経営指標が米国から導入され、資本回転率や利益重視がされ始めてから品質の劣化、組織の劣化が目立つようになった。全てが時間軸と成果で判断されるから振り返る機会もなくなったし、コミュニケーションの劣化が目立ってきた事も大きい。

                                                                                             社長   三戸部 啓之