254号-2018.9.25

[ 2018.9.1. ]

254号-2018.9.25


大卒の離職率データからでもそれを覗い知ることができる。

2017年のデータでも1年以内離職率11.3%(平成28年度就職者)、2年以内離職率22.3%(平成27年度就職者)、3年以内離職率32.2%(平成26年度就職者) 新卒社員の3分の1以上の人が、3年以内には離職し、1年以内でさえ平均すると15%程度の人がやめている。離職の理由として、
①思っていた仕事と違った。
②やりがいがなかった。
③給料が低かった。
④会社の環境になれなかった。
⑤職場の人間関係がつらい…がある。

2004年(平成16年)ごろから言われだした、入社3年で離職が中卒7割、高卒5割、大卒3割という「七五三現象」は、「少子化による売り手市場」「退職者に対する世間の評価」の変化「就職支援企業のキャンペーン」等によるものが大きい。1979年(昭和54年)ごろから離職率の傾向はみられたが離職理由の変化は余りなかったようである。離職の理由は様々だが、一部の優秀な社員を除いては「時間消費型の落ちこぼれ」である。落ち着き先に目立つのは「フリーターの若者」である。2012年以降減少気味ではあるがそれでも152万人と多く、若者に占める比率は男性で5.4%、女性で6.6%となっており、25~34歳の若者の増加傾向が問題視されている。

就職情報提供会社のリクルートが「自由な生き方、束縛されない仕事」キャンペーンを張り、ビジネスチャンスとしての求職市場の拡大化をはかった。終身雇用の崩壊や格差の固定化も精神的側面を支援した。就職をしないという選択肢は高度成長経済下で「いい大人のくせに!」「落ちこぼれ」として一定の社会的強制力が働き「石の上にも3年」と一人前になるまでは我慢が当然とされた時代のアンチテーゼとして機能した。フリーター・フリーランスというネーミングが、ある種の生き方のカテゴリーとして正当性を持った。

離職率の多さは若者の性行動に連動しているとの指摘もある。生殖機能が減退しており、子孫を残すという動物の基本本能さえ劣化している。男性の中でも結婚願望がなく異性に関心がない男性が増加している。日本性教育協会編「青少年の性行動全国調査に基づく若者の性:白書」によると最近の傾向として異性に全く興味がない男性が増えるとともに、反面一人の男性が多数の女性と付き合うプレイボーイ型の雑食系も増え二極化している。

リスクを避けようとする若者は異性の友人や恋人を持つ意向も低いとのデータがある。最早「草食系」のレベルではなく、自室にこもり食べて排泄しているだけのロボットのような男性が増えているらしい。 先進国で共通する問題だが若い男性が、学力や社会適応等様々な面で「劣化」している。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、各国の学校で男子は女子より成績が悪い、落第する生徒も多いというデータがある。労働でも悪い指標が並び20代後半~30前半の男性失業率の世界平均は9%(2012年)で約40年前の4.5倍と悪化している。
こうした現状から「やる気のない」男達が急増する状況が推測できる。幸か不幸かそれでも生きていける安全な社会になったという事でもある。しかもそれを糾弾する第三者は存在しない。

では現実の困難を避けた彼らは何をするのかと言うと、安全な場所に引きこもる事を選んでいる。自室でゲームやオンラインポルノに熱中し、思い通りの快楽を得られる仮想現実の世界に没頭している。背景には「男が一家の大黒柱に」という伝統の価値観は息づき、期待に応えようと思うが、不況と生活費の高騰で幸せな家族ライフは、得られそうもないと早々に絶望してしまうからという好意的な指摘もある。
社会進出が望まれる女性への支援は手厚いが、引きこもる男性には冷たい現実がある点も後押ししている。

昭和40年代~50年代のテレビコマーシャルで、一世を風靡した栄養ドリンク剤の「24時間戦えますか!」ガソリンの「おぉ!モーレツ!」自動車メーカーの「となりの車が小さく見えま~す!」が、ジェンダー批判や差別用語というバッシングにあい消えたころから、社会の活力がなくなってきたと危惧している。
公平より平等・自由が強調された結果、競争が忌避されだした点がそれに拍車をかけた。

日本経済新聞電子版2017.5.26によると、日本には「熱意溢れる社員の割合」6%、アメリカは32%。調査をした国139国中132位と最下位クラス。それ以上に問題なのは、企業内に様々な問題を生む「周囲に不満を撒き散らしている無気力な社員」の割合が24%、「やる気のない社員」は実に70%という事だ。つまり4人に1人が会社に不満を抱き、さらに意欲もなく仕事に傍観者的な社員が3分の2以上を占めるという訳だ。その一方、主体性や創造性を発揮しようとする社員は17人に1人しかいない。
このデータが示すような会社や仕事への貢献意欲の低さは、社員がおかれている環境と無縁ではない。

日本企業の内情を見ると、閉鎖的なサイロ(縦割り組織)の弊害が多くみられ、社員が能力を存分に活かせるような開かれた場が用意されていない例が多く見られる。

そもそも組織形態に完成形はない。組織横断型、クロスファンクションチームでV字回復を果たした日産の例もある。アメーバ経営で有名な京セラの例もあり、それを活用して再生したJALの例もある。組織規模・市場・工程・業種により常に見直すことが必要になる。

究極の戦闘組織である軍隊を見ればわかる。分隊~小隊~中隊~大隊~連隊~師団~軍団と規模と目的に応じて機能的に編成されている。ビジネス用語にも使われている。『戦略・戦術・ターゲット・指揮命令・攻略・統率』等枚挙にいとわない。軍隊のように精鋭チームを作り、目的を定め攻略ルートを考える必要がある。ブートキャンプという海兵隊の新兵訓練施設も必要で適性を見た配置や脱落者を予め想定した組織作りは今後必要であろう。海軍特殊部隊の「シールズ」の養成訓練を見ればその厳しさが理解できる。最強のチームつくりとは血の吐くような訓練と自己の生存をかけた精神力の養成にある。勿論犠牲はつきものだ。決して安全圏にいるエリートのたわごとでは理解できない。生きるという動物の基本動作が忘れている。全員が手をつないでゴールするのではなく、選ばれた人たちがチームを作る事が競争社会を生き残る条件になる。
ブラック企業なんていう言葉は、日本だけのマスコミ言葉だと理解しなければいけない。ブラック企業のレッテル貼りに脅えるのではなく、企業が生き残る為にドウ社員が関与するのか、という基本的命題を国民的規模で認識しなければならない。

あの厳しく有名な日本電産さえ「残業禁止、時短」になった。その本質は「生産性のアップ」だ。今はやりの「ワークライフバランス」も額面通りには受け取れない。日本ではワークとライフを二分法で分けること自体が文化的に向いていない。日本人は仕事と生活が一体化した「ワークアズライフ」の方が向いている。日本は歴史的にも労働時間が長い国家だし、国民自体も長時間労働に抵抗があったわけでもない。オンとオフの区別をつける発想自体、時短が国家的課題に上ってから出てきた言葉だし、此れからの時代に合うはずがない。
無理なく続けられる事を生活の中に入れ込み複数行うのが大切で、兼業を認める以上当然だ。これから時間が人の労働単位という考え方が変わり兼業解禁と解雇規制の緩和はセットのはずだ。
会社の専門性=自分の専門性になる事でその人間の価値がでて、市場価値が上昇するのだ。

近代はタイムマネジメントの時代であり現代はストレスマネジメントの時代になる。ストレスフルな仕事とストレスフルでない仕事をどうバランスをとるか?が本当のライフ&バランスなのだ。実際家庭のライフイベントの方がワークイベントよりもストレスがかかるのではないか。
人間には適性というものがある。これを踏まえた仕事のポートフォリオマネジメントがキーワードになる。更にコストセンターとプロフィットセンターを自分の中で分け、プロフィットセンターの時間をいかに増やすかにかかっている。より生産性を重んじる社会が到来したと考える必要がある。

                           社長   三戸部 啓之