307号-2023. 2

[ 2023.2.1. ]

307号-2023. 2

 
第35期上期決算が11月30日に終了した。

そこで、半期決算(6~11月)を点検してみた。

グループ全体の売上は21.9億(計画比95.3%)、営業利益は0.33億(計画比47.3%)だった。

前年同期は夫々売上22.6億、営業利益1.25億からすると、大幅な下落となった。主な項目別には賃貸仲介売上0.85億(前年同期0.77億、110.1%)、売買仲介0.23億(同0.52億、45.7%)、サブリース12.42億(同11.94億、103.9%)建築施工3.76億(同4.10億、91.7%)で、売買仲介・建築施工の不振が目立った。

しかし、売買仲介は時期により変動幅が大きいので通年で見ることにしており、今35期の通期予想値としては0.8億~1.0億というところに落ち着くはずだ。一年を通じて売買案件は一定数予想される。

当社のお取引先で管理物件オーナーの資産の組み換え案件が増えてきているし、相続対策を含めた境界確認、権利関係の調整、借地の正常化と解消、事業用物件の契約書の整備等で売買に発展するケースも増えているからだ。多年にわたる懸案事項だった案件も多く、こじれた人間関係で塩漬けになっている案件、建築確認がない物件、接道が取れずに既存不適格物件となる案件等、街の不動産会社がギブアップするような案件がある。

弊社の売買専門チームは年50件以上の困難なケースを解消し売買等に結び付けている為、そのノウハウは他社の追随を許さないと自画自賛している。

対応する資格者も宅建士、建築士は勿論、ファイナンシャルプランナー、不動産鑑定士、相続支援コンサルタント等の保持者である。街の不動産会社が放置している案件こそ、ご依頼いただければキッとご満足いただける結果を示せるだろう。

特に近年、相続税の「物納」が厳しくなり、土地や建物を納付財源として換金性のある状態にしておくことが必要になった。換金を阻害する要因としての、境界未査定、借地問題、不適格建築物、滞納問題等の事前解決が必要になる。相続税の納付期限は10ヶ月と短く、それまでに準確定申告、遺産分割協議とハードルも多い。納付財源を作るために不動産の売却もその期間内にすることは、大変な労力とスケジュール管理がいる為、正に当社の出番だと考えている。

建築施工については、コロナ禍で人の移動が少なくなり退去件数が減少した為、入居率は平均98.17%と好成績だったが、退去に伴う「原状回復費」としての建築施工売り上げが減少した。

前年同期比(6~11月)でみると402件の退去件数になり▽68件(前年同期比▽15%)だった。大型改修工事が少なかった点も考えられるが、担当者からの提案が少なかったことが大きい。

現在当社にお任せいただいている管理物件のオーナーは660人であり、有償管理戸数は6450戸、積水ハウス関係2100戸を入れれば総戸数8500戸になる。それぞれに担当者を配置しているが、「待ちの姿勢」が常態化しており、担当者側からの提案が少なく、あくまで、オーナーからの依頼を待って行動するパターンが多かったように見受けられた。営業に必要なプレゼンスキルも欠けていたと推測された。その結果、すべてが後手後手で終始し、当社の理念の一つである「顧客の最良のパートナーになる!」ことができなかった事は大いに反省すべき点である。

営業利益が激減した原因に一般管理販売費の増加と粗利額の減少がある。一般管理費5.7億と前年同期に比べ5.3%増加した。中でも人件費は3.8億と前年同期に比べ6.1%増加したが、従業員数は152人と変わらない為、一人当たりの支払総額は増えたことになる。これに関しては、かねてより業界一を目指している為、何とか維持したいと考えている。勿論営業職、内勤職とも成果型査定を自己実施計画→自己申告→上司査定→役員査定としている為、入社3年以上は個人差が大きくなる。

当社の中期年収目標では年齢×20万がある。平均年齢が役員と定年後の再雇用者を除き38歳なので、年収760万が平均年収(営業職)となる。営業職と内勤職では150万の差をつけているので、内勤職は610万となる。

2022年度は営業社員平均年収は647.7万円、内勤社員は488.7万円だった。まだ目標には遠いが労働生産性を高め目標年収に届きたいと考えている。現在の労働生産性は61.2%と目標数値の55%からは改善課題は多い。人事総務関係では人事ソフトを導入し労働時間管理、給与計算、人事情報、社内書類のデジタル化、外勤関係では外勤社員の位置情報、現場のフィードバック、コメント掲載、顧客データ管理等簡素化とスピード化を図るため1,000万円近い投資をしてソフトを導入した。これにより事務処理時間、データの検索利用等の省力化が図られ次期には人件費の削減に資するものと考えている。

粗利額が前年同期比6億と9.7%ダウンしたのは不採算工事の増加、売買仲介料の減少が大きい。工事のジョイントロスをなくし、汎用品の集中購買などでさらに原価を低減したり、工事の分離発注比率を高め発注原価を下げる工夫も必要になる。大手ゼネコンやハウスメーカーは新築工事の減少により、益々リフォーム工事に注力しているので、地域密着型の価格優位性を発揮するためにも工事原価の低減は企業の存亡にかかわるはずだ。

さらに営業職としては、詳しい商品知識、説明能力、ヒアリング能力が今まで以上に求められるので、社内のロールプレイや商品知識教育の充実への取り組みが必須になってきた。大手管理会社との競合も増えるだろう。大手にない魅力を作る事が当社のような地域密着型企業の生き残る道だ。転勤がない事も強みになる。専門家集団を背景に担当者が全てをさばける経験と知識も必要だ。そして、大手より小回りの利くサービスこそポイントだろう。

コロナ禍も今年で3年を経過した。その間にあらゆる業界でDX化(デジタルトランスフォーメーション)が進んだ。デジタル技術を使うことで、人々の生活やビジネスが変容していく、変革を起こすことをいうらしい。我々の日常生活の中でも散見しており、あえて意識もせず使用している。デジタル技術がなければ我々の生活レベルは格段に低下するだろう。このトレンドに乗れない企業は間違いなく淘汰される。デジタル・ディバイド(情報格差)は個人的にも所得格差に直結する。さらにVUCA(ブーカ)の時代にあるといえる。

VUCA(ブーカ)とはV「VOLATILITY:変動性」、U「UNCERTAINTY:不確実性」、C「COMPLEXITY:複雑性」、A「AMBIGUITY:曖昧性」の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味する。これまでは会社の言う通り、上司の指示通り仕事をしていればOKという意味で正解があった。しかしながら、今は昨日までの正解が今日は通用しないということが起こる。「赤信号みんなで渡れば怖くない」から「自己責任で判断しろ!」の世界への変化だ。

正解がない世界はある意味怖い世界。このため不安を感じる人も多いが、見方を変えれば、自分でオリジナルの正解を作り出せる魅力的な世界のはずだ。だが注意も必要だ。セーフティーネットがなければ誰も挑戦しない。失敗を許容する文化が前提になければ機能しない。今期の社長方針の中で、係長以上は一つ「新しい利益ソースを探せ!」と指示が出されたのは、これには以上のような背景があるからだ。

「少子高齢化・人口減少・地球温暖化・食糧危機」は明確なトレンドであるが、その具体策としては手つかずにいる。今後の賃貸経営では、避けられない課題として、高齢者対策、供給過剰対策、生活様式の多様化、外国人入居、入居審査の簡略化、賃貸住宅のホテル化がある。誰もがわかっており、理解しているが、何のアクションも起こしていないのが現状だ。当社が先陣を切って足元から提案するのも地域密着型企業としての使命だろう。

 会長  三戸部 啓之