201号-2014.4.25

[ 2014.4.25. ]

201号-2014.4.25

にっぽん商工という出版社で毎月発行している「わーく」という小冊子がある。

当社では社内ネットワークで何時でも既刊分をダウンロードして読むことができる。しかし自主的に読む社員は少なかった。そこで当社では昨年より毎日朝礼で当番が読むことにしている。そして、当番は感想とコメントを求めることになっている。一冊子分が夫々テーマを変え13項目になっているので13日相当分になり朝礼も充実する。
普通の社員なら当然頭では分かっていると思うが、中々日常業務の中で完全に落とし込むことは難しい。先の一例を紹介してみよう。「信用という財産を増やし続ける」という項目だ。
『信用を築くのは難しく、失うのは簡単である。会社は信用の積み重ねだ、信用はすぐには得られない。
たとえばあなたも、知らない人に会った瞬間からその人を信用する、ということは滅多にないだろう。いくらか付き合って、はじめて信用していいかどうかを判断するはずだ。会社も同じである。あなたがいま勤めている会社は、創業以来、お客様や取引先からの信用を積み重ねてきた。それは社長をはじめ、あなたの上司、先輩たちの努力のおかげなのである。その信用があるからこそ、金融機関からの借り入れもできる。

長く付き合ってくださるお客様に加えて、さらに新しいお客様も増えていくのである。

ところが、信用はこれほど大事な財産なのに、目に見えない。また、自社に蓄えられているのではなく、お客様をはじめとする社外の人々の心の中、頭の中に蓄積されている。いわば、他人に信用という財産をためている。
そのため逆に、その財産が減っていっても、なかなか自分たちでは気づかない。そこが怖い。しかも、信用を築くには長い時間がかかるが、失うのはほんのわずかな時間である。会社の信用は、社長はもちろんのことだが、社員一人ひとりの肩にかかっている。

例えば、お客様からの問い合わせに十分な対応ができなかったり、クレームに対して丁寧な応対ができなかったりすることは、それだけでお客様からの信用をなくしている。お客様に送る伝票類の間違いや、約束した時間に遅れることも、信用をなくしている。ただ、お客様は黙って去っていくので、気がつかないだけなのだ。

会社で働くということは、一人ひとりがお客様からの信用という財産をいかに維持し、増やすかということである。職場の規律や報告、礼儀正しさなどが、なぜ大切なのか。それは信用の維持と積み重ねに直接つながるからである。あなたの日々の仕事はお客様からの信用を積み重ねているか、それとも減らしているのか、毎日自分で振り返ろう』いかがだろうか?
内容は小学生レベルの話だ。しかし「信用」ということは「国語辞典的」に理解はしているが日常業務の中で置き換えると、意外と10もいえない。出社して退社まで休憩時間も入れて拘束時間は7時間30分、様々な顧客との関係で場面ごとに起こる。電話の応対、来店客の応対、書類の書き方、請求書の正誤、社用車の運転、会社の概要、質問やアドバイス等々ある。それを信用付与・毀損という観念に置き換えて仕事をしているかは疑問である。その意識した行動こそが信用預金をすることができるのだ。

 昨年、15年にもなるお付き合いのあるオーナーから、突然当社の管理をお断りしたいとの話があった。担当者に聞いても思い当たる節はないという。挙句の果ては、「他社から好条件の提案があったからだ!」 「後継者との人間関係が希薄だったからだとか!」「原状回復工事の見積もりが高いから!」との話に終始し原因が納得できなかった。
そこで責任者が直接そのお客様にお伺いしてお話を聞いたところ、きちんと過程を踏んで説明もせず、資金繰りも考えずに強引に工事を提案したことが判明した。

当社も含めて建築会社や高額商品を扱う企業は、数百万、数千万という単位で仕事をしている。数万~十万単位の仕事を軽く見る悪癖がある。信用が基礎にあるから簡易な概算見積もりで済ます傾向がある。常識的に考えれば、不知の相手に例え10万でも受注するには相当量の資料や面談回数が必要だろうし、検討の土俵に乗せてもらうには、企業や担当者が信用を得る事が必要だろう。更にこのケースで問題なのは顧客の長期空室に対する精神的不安状況を酌まず、キャッシュアウトも考えずに自部門だけで事務的に進めた事が当社に対する信用を大きく毀損することにつながった事が分かった。
結果的に担当者はもとより直属上司も含め、各関係部署とも確認し、全社的対応をする事で、「執行猶予期間」を頂き捲土重来を帰すことになった。効率と部門責任制を目指した負の結果が出た事になる。

赤面の至りであるが、小職がお送りした手紙が以下にあるので、再度私自身も含めて再確認する意味で取り上げた

以下手紙文
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〇〇様とお知り合い、その期間も長期にわたり、〇〇様のご厚誼とご助力が在ったおかげで「信頼の貯金」ができてまいりました。ところが担当が替わり、年月が経過すると共に、〇〇様に対して当社も甘えができてしまいました。その結果、お付き合い始めた当初の緊張感と〇〇様に感謝する気持ちも薄れていたようです。             

当社をずっと支えていただいた〇〇様に対する大恩は決して忘れてはならないものですが、経緯を知らない他の社員にきちんと伝えていなかったと反省しております。                                          

・・・・・また、〇〇の土地は旦那様が〇〇を開設するつもりで購入した思い出のある土地で、我が家のシンボルだということもお聞きしておりました。それをお聞きした時は、運営を任される当社は相当の覚悟で気を引き締めたものです。そうこうして、数ある管理会社の中で、現在までに〇〇等沢山の物件を当社に任せていただくようになりました。本当に有難いことです。                                                              今回の件で残念ながら、今までの「信頼の貯金」は全て無くなったものと考えております。                  

許されるならば、初心に帰り一から「信頼」を勝ち取り、従前にも増した「信頼の貯金」を積み立てて行きたいと考えております・・・今回、当社に再度「ご猶予」を与えてくださった事は、当社にとり最後のチャンスだと考え、全社一丸となり対応する所存でございます。

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顧客と当社の取引に至った事情は、会社の財産として決して風化させてはならないものだ。競合他社の中で当社を指名してくださった経緯こそ、暗黙知としての企業の預金なのである。だから会社から指示されなくとも、担当になれば当然の義務として聞き、把握するべきなのだ。
古い諺に「井戸を掘った人を忘れるな!」とあるように、時間が経つにつれて、水が飲めることが当たり前になると、まずい水と文句を言ったり、無駄に使用するようになってしまう。

今はやりの「過去の成功体験に引きずられるな!」ではなく「過去に成功した理由を全員に浸透させろ!」が重要なのである。企業は永遠に信頼の預金をしなければならない、それが顧客に選ばれ続けるということだ。

社員は競合他社より一層の知識の習得と信頼預金に見合った提案能力が必要なのだ。その努力を放棄した社員は会社にとっては不良資産であり信頼預金を浪費する社員でもあるのだ。

社長 三戸部 啓之