214号-2015.5.25

[ 2015.5.25. ]

214号-2015.5.25

 

我が国の人口減少はじわじわと、だが、確実に進行している。団塊の世代が65歳を越え、現役を引退しつつある。厚労省の調査によると、2014年の人口の自然減は過去最多の26.8万人に達し、8年連続での減少とされている。今月、本格的にスタートした新卒採用においても、昨年を振り返ると、大手がちょっと採用増に動いただけで、一気に売り手市場になった。

当たり前だが、卒業する学生数が減っている。大学進学率が高くなり、製造業の海外移転やロボット・シフトで高卒の求人が減少してきたから、あまり表面化しなかっただけで、若者の数は確実に減っている。若者が減っているから、飲食や小売など若手バイトに依存していた業種では人手不足が深刻だ。時給を上げても人が来ないという店も多いし、今いる社員が長時間労働してしまうと「ブラック企業」だと叩かれる。戦時の「非国民のレッテル」を貼られるのと同じで企業経営者は戦々恐々としている。かつては企業経営者は利益を出すことが、その存在価値であったと思うが、今では「やさしい企業」つくりが企業経営者の勲章になるらしい。

こうなると、ある程度は給与水準を上げざるを得ないだろうが、それにも限度があるし、結局コスト増は、顧客が支払う価格に転嫁される。「売り手の人材確保のために、高いモノを買いましょう!」なんて政府がキャンペーンでもやってくれるならいいが、そういう訳にもいかない。

中曽根首相のときは、「ロン・ヤス」の関係をことさらに強調して、首相自ら「米国商品を買いましょう!」とパフォーマンスをした事があるが、安倍首相のようなサラブレッドなら望み薄だ。やっても効果のほどは疑問符がつく。もはや、我が国では人を省いて、より少ない人数で生産性を上げる「省人数経営」へシフトするしかない。単に社員数が少ないのではただの「少人数経営」になってしまうが、本来5名で10名分の仕事、30名で100名分の仕事をするのが「省人数経営」になる。それをどうやって実現するか。

「仕掛け」と「可視化」を組み込んで、経営体質を強くする!というのがコンサルの常道だ。
キーワードの1つ目は、IT活用、ロボット活用である。雇いたくても人がいないなら、雇いたい人が来てくれないなら、その仕事はITやロボットに置き換えて、省人化、機械化していくしかない。

先日、ソフトバンク・ロボティクス社が世界初の感情認識パーソナル・ロボット「Pepper(ペッパー)」を開発者向けに販売開始し、Webサイトでの初回販売分がわずか1分で予定数を上回った。

二足歩行ではないけれども、そこにはリアルに人型のロボットがいて、もうすぐ世の中に出てくる。スマートフォンやタブレットの浸透でITはすでに肌身離れないものとなったが、ロボットもすでにSFの世界ではない。人間の仕事がITやロボットに奪われることになるのではないか、と危惧する声もある。でもイギリスで産業革命のときに起こったように「日本版ラッダイト運動」は起こるかもしれない。企業とすれば、低コストで、24時間365日、単純作業の繰り返しでも不平不満も言わずに働いてくれる「存在」があれば、その「存在」が生身の人間だろうと、ITだろうと、ロボットだろうと、活用するに決まっているし、活用しなければその企業の「存在」自体が危くなる。そして、生身の人間には、どうしても人間でなければできない仕事、より創造性を発揮し、質の高い仕事をしてもらいたいと成るわけだ。

こでもう一つのキーワード、「経営の見える化」が登場した。IT・ロボット時代に置き換えられない人材は、自らが「頭脳工場」という生産設備を持つ。会社の所有する資産や設備に縛られることはない。だから企業に対して、遠心力が働きやすい。

彼らを採用し、つなぎ留めるためには、求心力となる理念や目的、ビジョンが示されている必要がある。さらに、企業の方向性、将来ビジョンを描いて全社員に伝えなければ、戦略に整合した各個人の自発的行動は導き出せない。

また、各個人の仕事内容や業務の進捗状況が可視化され、それに対する社内外からのフィードバックがなければ、進むべき方向やスピードを修正するための意思決定(自律)ができない。

つまり、先頭を走る車両だけが後続車両を牽引する「機関車経営」から、全車両が駆動力と制動力を持つ「新幹線経営」にシフトするためには、「経営の見える化」が不可欠なのである。

確実にやって来る、いや、すでに起こった未来である人口減少時代(マーケット縮小、人材不足時代)に如何に対応するかにかかっている。

営業は拙速を尊び、何よりもスピードを重視する。スピードは最も費用のかからない差別化であり、完璧を目指して遅れを取るようでは話にならない。

コンスタントに実績を挙げる営業担当者の特徴は「スピード」である。口が巧い営業、誠実さが売り物の営業、商品知識でアピールする営業。よく売る営業担当者には色々なタイプの人間がいるが、彼らに共通して言えるのは、「速い」ということだ。逆に言えば、トロくさくて売れる営業担当者はいない。

トロトロして、なかなか行動に移さない者に限って、急げと注意すると「今やろうと思っていました」「もう少し工夫したいと思って」とか、あれこれ言い訳をするものである。

商談を進める前提として、顧客との信用信頼関係を作るためには、「ここまでやるか?」と思わせることが大切だ。永年の付き合いの中で信用され、信頼関係を築くというのなら、当たり前のことを実直にやって、誠心誠意、事に当たればいい。

しかしそれには時間がかかり過ぎるわけで、その時間を一気に短縮するために必要なことが「ここまでやるか?」と思わせることである。そのための第一が、スピード。「もうできたの?速いね!」と言わしめる。これが最もローコストで実現できる差別化手法なのだ。普通なら3日かかることを1日でやる。3時間かかることを1時間でやる。もちろん、毎日やろうと思っても難しいだろう。全ての顧客に対してやろうと思ったら難しいかもしれない。しかしここぞ、という時には一気にスピードを上げる。これによって、自分も効率がいいし、お金をかけずに喜んでいただける。

以上は以前受講した「あるコンサルティングセミナー」の抜粋だが、頭では理解しているが「実行できるか?」ということに尽きる。これが人生の分岐点になるだろうが、殆どの社員は自分の人生ゴールを作ることに時間を割かないし、そこに投下される人生時間も計らない。だから、たいがいの社員は当然人生のゴールにたどり着かない。人生の勝者には成功の方程式がある。「成功する人は100人に一人、先達の参考になったということを、全てやり遂げた人とも言える」

研修の効果はせいぜい一週間、いつか花が咲くだろうと「我慢比べ」に近い。当社でも年間500万の費用で、新人、中堅を含めて研修に取り組んでいるが、この辺の葛藤をいつも抱えている。

社員教育は「息の長い投資」だが、やらされ感をなくし「自分の幸福手形」を落とさせる気概も経営者の責任かもしれない。

社長 三戸部 啓之