286号-2021.5.25

[ 2021.5.1. ]

286号-2021.5.25

2021年2月17日に2020年度12月実施の第2回宅建合格者の最終発表があった。10月実施の合格点は38点、12月実施の合格点は36点で、合格率は其々17.6%、13.1%だった。その12月の発表で1名当社関係者が合格した。

当社関係者と言うのは、アルバイトで来ていた大学の4年生である。彼は当社の仲介店で客付けの支援業務を主にしていた。大学3年生の時からであるから、1年半当社でアルバイトをしていたことになる。アルバイトをしているうちに将来は不動産業に進みたいと心を固め、4年生になった時にまず基礎資格である宅建を目指したとのことであった。つまり彼の勉強期間は実質1年にも満たない時間であった。

彼はアルバイトをしながら学業と両立させていたことになる。そして一部上場企業の某不動産会社に就職が決まった。コロナ禍で就職氷河期の再来と言われる厳しい就職戦線の中で、見事希望の会社の内定をもらったことになった。

当社の資格合格必須取得義務者は外勤社員26名、内勤社員7名の計33名(産休中の3名は除く)である。その内訳は、在籍一年以上の社員8名、3年以上の社員は8名、5年以上の社員は14名、10年以上の社員は3名である。これらの社員に対して、如何に今年中に取得させるかが課題になる。

今迄にも先輩達のボランティアにより、早朝勉強会、模擬テスト等をしてきたが、その参加者からは残念ながら合格者は1名も出ていない。不合格の原因は、勉強会に参加するだけで満足し、他に何もしなかったからだという。推測するに延べ勉強時間は100時間にも満たないだろう。これでは巷間言われている最低合格ラインの500時間には到底達する事は出来ないし、不合格は当然である。つまり、意識の問題なのだ。「受からなければならない!」という義務感が欠如していた。

彼らの言い訳は決まっている。「営業実績と資格は関係がない!」「業務に集中すれば疲れて帰宅しても本を開く気がしない」だ。この言い訳を10年も言い続けている強者もいる。又、「僕は勉強が嫌いで本を読むと10分で寝てしまう!」という輩までいた。
「入社時の面接で宅建の取得は義務だ!」と明言しているし、その条件を自ら破った事にもなる。

主たる原因は分かった。ではどうするかだが、2つの解決方法がある。1つは、ペナルティーを強化する事だ。もう1つは意識を変えてもらう事だ。そこで、今年から宅建合格は「会長マター」にした。
今年度の合格者目標は10名にした!合格率は30.3%。毎年合格者は2~4名で、その殆どがパート社員、事務社員で正社員は0~1名に過ぎないから、この目標は相当ハードルが高いミッションだ。まず、「意識改革」から始めることにした。

2月に、「自分が今年合格するために、必要な点」を任意で3点あげてもらった。それを10月まで毎月実施してもらうわけだ。勿論その間に模擬試験を2回実施するので、その結果により実施項目を変更する事もありうることから、1項目調整事項を加味した。PDCAの受験版になる。自ら、考えて合格するマイルストーンを作成したはずで、後は実施する事だけがポイントになる。勿論、内容の点検もした。コレでは合格は及ばないと考えられる内容もあったからだ。

並行して、不合格の場合は「恥をかいてもらうよう」自らを背水の陣に置くことを要求した。それでもなかなかエンジンがかからない社員もいる筈なので、意識が後退しないように「取得の意味」「職位のスキル」「企業の理念」を徹底的にすり込ませることにした。
これらは、当社の企業理念である「最善の資産運営、活用を提供する」「顧客の最良のパートナーになる為に常に努力する」に合致するからだ。「名は体を表す」ように、宅建を取得すれば一応不動産に関する知識と関連知識は習得できるはずなので、顧客に対しても「知らないで済むことができない」し、「宅建資格があるのにこれも知らないの!」と言われないように、常に関連知識の習得に関心を持つに違いがない。
取得する事により、自覚と矜持が出てくるはずで、更なるレベルアップが期待できる。

元々当社に入社する社員は、2~3の例外を除いて初めから当社を目指してくるわけではない。他の会社が不合格だったから入社してきたという社員が殆どだろう。つまり、一流企業にストレートで入るような優秀な社員ばかりではないという事だ。採用した以上はそれなりの覚悟を持てという事になる。手間暇をかけ鍛えなおせ!だ。

新入生研修でもその点は強く話している。今までは良いが、これからは今迄のんべんだらりとしてきた姿勢は即改めてほしい!これからでも十分に取り返せるから、気持ちを改めて自分の武器を作ってほしいと話しているが、1年たつと忘れてしまうものらしい。

これは先輩たちの仕事に取り組む姿勢が悪影響している。その主たる原因がベテランになるほど宅建資格取得から遠ざかるという点だ。先輩たちの姿勢を見て企業理念もどこかに飛んで行ってしまったのだ。諸悪の根源はここにある。未取得者の先輩たちに囲まれ緊張感がなければ、新入生も同調するはずだ。上司を差し置いて合格するわけにはいかない!という猛者までいる。こんなふざけた言い訳が通用する組織自体が異常なのだ。彼らの言い分である「資格と実力は連動しない!勉強より実地で学べ!」をそのまま受け取っている。どんなに運転が上手くとも無免許では公道は走れないし罰則もある。宅建も未取得者は一人では業務の完結ができない。

思い出すのは、今を時めく名経営者と誉れも高い永守重信氏の言葉だ。「IQなどによる能力の差は、どんなに頭が良くても普通の人のせいぜい5倍ほど。一方EQ(心の知能指数)の高い社員とやる気のない社員を比べると、仕事で100倍以上の差が生まれることがある。私の欲しいのは、玉露のカスよりも番茶の上等です」

更にやめてほしい社員とは「知恵の出ない社員」「言われなければできない社員」「すぐ他人の力に頼る社員」「すぐ責任転嫁をする社員」「やる気旺盛でない社員」「すぐ不平不満を言う社員」「よく休みよく遅れる社員」だそうだ。これはそのまま宅建未取得者にも当てはまる。つまりこのままでは未取得者は全員「去ってほしい社員」となる。

「人材がいない」とは経営者の常套句だ。経営者の重要な仕事の一つは社員の教育だ。「何度も何度でもビジョンを刷り込む」事で社員全員のベクトルを合わせ、社長の熱意は「キャッチボール、投げ続ければ返ってくる」であきらめずに続ける。「鯉の中にナマズを一匹、緊張感を常に持たせる」事で刺激を常に与える。「合格者というてっぺんの層をつくり、全体を引き上げる」という事が必要だとされる。

自分の子供でも親の言う事を聞かせるには大変な労力が必要だと考えれば、他人で育成環境も違うレッキとした大人を鍛えなおすのは至難の業だ。まして昨今では下手に力ずくで追い詰めればパワハラになりかねない。我々の業界のように「知恵と経験」を商品にする組織は、内面から鍛えなければ社員は育たない。それには厳しさが必要だが、以前のような上位下達の一方通行ではない。納得させたうえでの自律的な厳しさを持たせることになる。コミュニケーション如何になるが、具体的方法としては難題が残る。会長になってからの新しいミッションになったが、見事目標を達成できるかが今後の当社を占う事になる。

                          会長  三戸部 啓之