212号-2015.3.25

[ 2015.3.25. ]

212号-2015.3.25

pdca恒例の成果発表大会が1月15日(営業部門)、16日(管理部門)で各半日かけて開かれた。
当社もそれを始めてから約20年、発表手法だけは随分と進歩した。
しかしPDCA《Plan(計画)、Do(実施・実行)、Check(点検・評価)、Act(処置・改善)》サイクルの必要性は理解できているが、細部にわたると課題は多い。
そもそも計画立案するとは・・・

過去のデータからできた理由、できなかった理由を抽出し、「何故そうなったのか?」と言う事実を直視することから始まる。当然結果に対しては原因があるはずだから、其の原因を分析する必要がある。唯其の原因を表面的に捕らえてはいけない。其の原因をもっと掘り下げなければ、真の原因が見えてこないからだ。そのためには「何故?」を3回は最低繰り返す必要がある。「トヨタ」のように5回繰り返すとなれば、より真因に近づき具体的改善行動につながるが、それには相当な訓練と勉強が必要になる。

例えばトヨタの例で、「モーターが焼けて機械がストップした」と仮定すると・・・

  1. 「何故焼けたのか」→「過負荷がかかったからだ」
  2. 「何故過負荷がかかったのか」→「油の中に異物が混入したからだ」
  3. 「何故異物が混入したのか」→「ストレーナー(濾過器)がついていなかったからだ」
  4. 「何故つけていなかったのか」→「ちょうど修理している最中であった」
  5. 「何故予備を持たなかったのか」→「予備品管理の決まりに不備があった」

以上、5回の「何故」を繰り返して、ようやく「予備品管理の決まりを細かくする」という対策の必要性にたどり着いた。このように何故の追求の仕方が足りないとモーターの修理で終わってしまう。《トヨタ式人間力:若松義人他著より》

つまり真因がわからないので、同じことが又起こる事になり、効率化やミス防止対策にはならない。それは最近流行の「ロジカルシンキング」の思考方法でもある。当社のようなレベルでは、昨年対比〇%とかで終わっているケースが多い。売り上げ前年比〇%、仲介件数前年比〇件UP、管理戸数取得前年比〇戸UP等である。

何故これが問題なのかというと、計画に対する根拠が全くないか、不十分だという事になるからだ。前提となる構成社員のスキル、経験や市場、競合、自社商品の位置づけやシェアーが考慮されていない。そもそも其の数値が何故出てきたのかが不明であるからだ。このように自社や自己の位置づけを正確に捕らえないと計画数字自体が意味を成さない。

 自分のエリアの賃貸市場はIK物件が〇%、ファミリーが〇%、年間流入人口、世帯は〇%、最寄の駅の乗降客数の変化、うち定期券購入者の推移、平均年間所得世代数の変化、新築供給戸数等は最低必要なデータになる。これは川崎市や横浜市での統計資料でいつでも閲覧できる。より詳細に検討するなら、自社の周辺にある物件の全て目視で確認すればよい。時間的制約があるならば、自社エリア半径2キロ内の物件を調べればよい。そこで自社の管理物件との比較をすればより、地域に密着した生のデータが取れる。それを元に経年的に成約や空室をネットでチェックすれば全体の仲介件数や空室期間がわかる。

又、其の拠点の経営資源である「ヒト→人員・スキル」「モノ→商品・ツール」「カネ→資金・販促」「情報→企業が持つ情報資源、ノウハウ・データ・知見等」にさらに「顧客資源→既存・見込み客等」を正確に把握する必要がある。

有名な「ランチェスター戦略」によれば、当社のような地域密着型を思考する企業は当然「局地戦」を考える事になる。ここでいう強者(N0,1企業)とは単品での顧客シェアー、細分化された市場シェアーがN0,2企業の3倍持つ企業である。それから言えばナショナルブランドのD社、ローカル企業ではT社しかない。詳細は後日に記すが当社は「弱者戦略」をとる必要がある。実例に拠れば、総合食品メーカーでは味の素は強者だが、マヨネーズという商品に対しては弱者である。ビールでも沖縄ではオリオンビールは強者だが全国区では弱者である。局地戦でN0,1を目指す「キューピーマヨネーズ」、ガリバー企業キリンに対する沖縄の「オリオンビール」の戦略も参考になる。

これが一番必要な「現状把握」になる。それが出発点だ。それから「現状分析」になる。ここで先の「何故」がでてくる。計画立案の過程を数量的に把握するならば60~70%にならなくてはいけない。これをきちんと踏まえる事で計画と実施がより具体的なものになってくる。

当社の課題はまさにそこにある。「現状把握~現状分析」が10~20%、「対策~計画と実施」が80~90%では対策も甘く、それに基づく計画も達成はおぼつかない。しかもPDCAサイクルも6ヶ月に一回しか回らないようでは改善には程遠いし、期末になって「ダメでした」で終わってしまう。

この繰り返しが、当社の成長阻害要因だったし、社員のスキルも所定のレベルまでには中々行かない理由だった。結果オーライで全てが運んでいたことになる。「タナぼた」でも結果さえ良ければ不問にされていた。上司もプロセス管理をしないから、部下の成長は本人次第で教育は意味がない事にもなる。組織構築を今まで何度も取り上げながら科学的管理手法からは随分と距離があった。毎回発表後のコメントで話しているが、問題をきちんと取り上げていたのか、事実を評価していたのか、反省してもらいたい。

以前当社の中途入社の社員から、どうしたら仲介が伸ばせるかと相談されて、以上のような地域データを作れば自社物件と競合にある物件の商品説明が完璧にでき、来店客のクロージングに役立つと指示した。作成後来店客の案内率や成約率が飛躍的に伸びた事がある。データを元にプレゼンをするので、相場家賃の把握もタイムリーだったし、オーナー様にも入居希望者にも説得力を持ってクロージングが出来ていた。残念ながら、それを引き継いだ担当者が「便利だ!」と数ヶ月使用していたが、手間を惜しんでデータの更新がされないため、使用できなくなった。

毎月数字に追われ敏感なはずの営業職でも、こういう考え方をする社員は殆ど居ない。きちんと顧客管理を継続していれば、毎月に受注も間違いなく平準化し、精神的に追い詰められることも少ない。其の余裕時間を持って更なる自己啓発も可能だ。

営業職ほどK・K・D《勘、経験、度胸》が何時までも通じると思い、旧態依然とした営業スタイルをとっている。
「科学的データ管理や行動をとれ!」といっても、中々実行できない。「事務処理が面倒、デスクに座っているのが嫌だ!」、というのが営業の気質と言えるが、何もデータ入力と調査で毎日数時間もとられるわけではない。要は一日60分程度の我慢だ。ネットの普及で従来のような対面販売や話法が通じない時代になれば、事前のデータや資料の提示が全てを決するようになってくる。思いつきや勘で行動し、媚を売るだけの営業や、顧客に対しても押せ押せのプッシュ営業では、もはや職人的な営業社員以外は難しくなるだろう。                  
                                 社長 三戸部啓之