217号-2015.8.25

[ 2015.8.25. ]

217号-2015.8.25

 

「わーく」という小冊子がある。これは、株式会社 日本商工振興会でテーマごとに毎月刊行しているものだ。
「わーく」86号の「個客の貢献に徹して自分と会社を!」は次の通りだ。
弊社では、朝礼時にこれを輪読している。

 

 

①  利益を稼ぐ現場は常に顧客最優先!
②  顧客ニーズを先取りできる現場であれ!
③  顧客最優先が職場に活力を与える

④  コストダウンは「顧客への貢献」だと知れ!

⑤  基本の徹底が生産性を向上させる

⑥  軽快なフットワークが顧客思考の証

⑦   顧客やライバルの情報で職場を刺激せよ

⑧  「顧客の喜びはわが喜び」といえるロマンを持て!

⑨   自らも顧客として体験せよ

⑩   情報を共有し全員参加を実践せよ

⑪   顧客から情報を吸収する
               例えば「顧客最優先が職場に活力を与える」の章では・・・・

《不況を乗り切る力は現場にある。優良企業といわれる会社は、何処を見ても商品やサービスを生み出す「現場」が、顧客志向に徹して運営され、メンバーの士気が高く行動力にあふれている。生産している現場、販売している現場、サービスを提供している現場・・・部署を問わず顧客最優先の考え方が定着している。その結果、顧客からの評価が向上し、信頼と利益を生むのである。
顧客最優先の考え方とは、顧客に貢献しないことはやらない、という考え方でもある。無駄を削り、低コストの運営を目指すのも、全て顧客のためである。業界NO1企業だったある老舗企業の話だが、見学者がたくさん訪れる工場だったためか、最新鋭の設備を導入することにひときわ熱心だった。工場の幹部から若手技術者に至るまで、奇妙な一流意識を持ち、見学者が目を見張るような設備を業界NO1の象徴と考えていた。そこに「工場は顧客に貢献するためにあるもので、利益を生む源泉」という発想は全くなかった。ところが、やがて業績が落ち始めると、この工場は一転して「コスト高で利益の出ない現場」に早変わりした。いくら最新の設備であっても、顧客を忘れた放漫な現場では何の価値もない。

会社を評価するのは、見学に来る同業者やマスコミなどではない。顧客が望む価値を確実に提供し続け、顧客との関係をより強固な長期的なものにすることで、顧客満足を獲得し、会社は成長を持続することができる。あなたも会社の価値は顧客が決めるものだということを忘れてはならないのである。これからは、会社のお荷物になっている部門は、間違いなく生き残れないのだ。
顧客にとっては、良い商品、サービスをより低価格で提供してくれるかどうかだけが問題なのだ。
あなたもそれに貢献する社員として、誰もが認めてくれる存在にならなければならない》

如何だろうか? 聞いてみれば、内容自体は目新しいものではないし、当然だ!と思っている内容に過ぎない。だから朝礼時に輪読を指示しても、当初数ヶ月間は実施するが後が続かなくなる。様々な理由にならない理由をつけて実施していない拠点が多くなっている。

そもそも、この一見低レベルと錯覚している内容が、できないからこそ、また上司も指導できないから、朝礼で読むように指示しているのだ。

読み続ける事により、どんな鈍い社員でも少しは感ずるところがあるはず!ということで指示している。言葉を理解するだけでなく、その意味を実践できてこそ理解しているというのだが、頭で理解していても中々実践できないのが現状だ。
いくら自動車運転読本を丸暗記しても、実際の運転はできないのと同じだ。まして不測の事態にあって適切な対応ができる事は不可能に近い。ビジネスの現場も同じだ。臨機応変の対応が求められる。それも飛び入りが入るのが常態だ。だから手を抜く、知らん振りをする、余計なことに手を出さない。「顧客思考」で物事を判断せよと言っても、日常業務に置き換えることが中々できない。

常に自分本位で考えてしまうから、定形外の事柄は「顧客のわがまま」と判断し、そこで思考停止してしまう。学歴とか知識があるとかは実社会ではあまり意味を持たない。あっても、「顧客に好かれようとしない、顧客の立場で考え、改善することができない社員」ばかりでは存続は危うい。

サービス業にあってはそこが一番大切だが、これがない社員はサービス業では使えないということだ。特に内勤・業務社員はそこを意識しないと、益々自己中心的、他律的になるから要注意だ。

このあたり前の事を愚直に実施していれば、今より数倍の力も付くし、どこへ出しても恥ずかしくない社員になれる。大体、簡単なこと、当たり前のことでも継続できない組織は、ミスも多く組織の箍も緩んでいる。従来の慣習や、やり方の踏襲で工夫もなく、疑問も持たず、ただ機械のように無表情ではかえってマイナスだ。営業社員が愛想が良いのは売りにならないが、世間一般的に内勤・業務社員は、暗い・融通が利かないなどのイメージが強い中で、相手から好感を持たれる話し方や接客ができる社員は、大いに売りに成る。それも立派な営業支援になる。

自分や所属する組織防衛のみに汲々としているのが内勤・業務社員の特徴といわれ、部署替えや異動は必ず抵抗にあう。それも管理職が最大の抵抗勢力になる。だから社内の異動が定期的に行われないと、部分最適になり全社的な視野に立てない狭溢な社員ばかりのいびつな組織になってしまう。ルーティンワークが多い業務の性質も理由の一つになる。
なぜかというと部署や業務の内容を変えれば自分の無能さや無駄な作業が衆目の前にさらされるからだ。そういう社員は、常に自分の貢献度や生産効率を考えて、自己のポジションを見ているわけではないので自己評価はあきれるほど高い。やらない、できない、と理由付けだけは長けているから、上司も敢えて火中の栗を拾わず、しぶしぶ納得してしまうことも多い。それゆえ、課内の抵抗は多いが、所属長は確固たる意思を持って其の弊害を理解し、全社的視野に立って行う必要がある。内勤・業務社員の「顧客思考」とは他部署への営業支援でもある。

しかしこれが 中々できないから厄介だ。顧客に直に接する部署以外は、感覚が麻痺する危険がある。午後5時過ぎに回収に来るのに、「ゴミ回収袋」を午前中から入口際に積み上げているとか、社内便が滞留しているのにもかかわらず、該当店に連絡もせず数日間放置しておくとか、営業店のそばを通るのに、ついでに持っていく意識もなく、其のため期限が過ぎてしまった、があっても全て相手の問題だと意に介さない。「営業店は少ない人数でてんてこ舞いしているのに、溜まっているのを取りに来いという意味ですか?」とその辺の気配りがない!と叱責を受けたこともある。どの店舗も自店に溜まったら、持っていくという意識なのに、「管理店舗だけは取りに来い」という事ですか? 「内勤・業務社員が多い店舗は、溜まっても電話の1本も掛けられないのでしょうか。逆に顧客対応店舗のヘルプに来てもらいたい位ですが」と小職も叱責を受けた一人だが、やはり現場から離れていると相手に気配りする感覚が麻痺してくる。こんな社員が増えてくれば組織は崩壊し倒産の道を転げ落ちる。営業の現場から遠くなると当たり前のことが見えなくなる。自省の意味も含めて書いた次第である。

      社長 三戸部 啓之