[ 2017.4.25. ]
237号-2017.4.25
営業、内勤事務を問わず全部門に言えるが、工夫・知恵が足らない。
管理部の一例をあげれば「CS件数:クレーム件数の増加」がある。昨年から「クレーム」という言葉は社内では禁止になった。その言葉自体が否定的な意味を持っている為、取り組む姿勢が前向きにならないからだ。クレームは改善の宝庫であり、顧客の信用を得る最良の事柄だからで、「カスタマー・サービス:CS」となったわけだ。賃貸物件の管理戸数が増えれば比例してCS件数が増えるのは当たり前だ。そこでの対応は2つになる。
一つは「何も考えずにCS件数が増えたから社員数を増やしてほしい」と、工夫のかけらもない解決策だ。
もう一つは、CSの内容を分析して、当社の社員が現地にいく必要があるCS,電話や手引書で解決できるCS,契約時や更新時に注意を喚起することで解決できるCS等、項目ごとに解決策を考える方法だ。そこで、その緊急度を加味したCS内容の分析が必要になってくる。
それは毎日の業務計画にも反映してくる。緊急度を考えた優先順位から効率的な訪問ルートができる。その軽重をつけないと人的負荷に耐えられないし、疲弊するだけで効率も悪い。CS自体は最終的にマンパワーで解決するしかないので、いわゆる省力化には限界がある点も理解している。だからこそ、コスト意識が他部門以上に必要になる。
今、部門別に業務コストを算出し、社員一人当たりの効率と生産性をガイドラインとして効率化を目指している。これをすると「いくらのコストがかかり、その原資はあるのか、会社に対する貢献はしているのか?」が明確になり、当然そこに改善意識が出てくるはずだ。短絡的な最初の提案は話にならないが、当社ではそれが当然だと思われているので次善の解決策は出てこない。思考停止状態に近い。考える頭脳と行動があれば、当然第二の解決策を指向するはずだ。
CSの内容にもよるが、当社のホームページでその解決策を項目ごとにビジュアル化して載せていれば、ホームぺージにアクセスすることも多くなり、副次効果として当社への業務内容の理解にもつながる。 CSが増えることを危惧するのではなく、現在のCSを如何に減らすかを考えることから始めなくてはいけない。それを極限まで追求し、最後の解決策として人員の増加の話なのだ。
更新に関しても同じだ。文字情報ではなく、ビジュアルに社員が登場し解説することが、当社への距離感も縮まると思う。スマホ対応にすればもっとアクセスは増えるだろう。管理戸数の増加と比例して更新件数も増加する。これをいかに簡略化し時短化するかが求められている。現在試行されている「IT重説」も従来の対面的説明をITで済ませようとする試みだ。これが一般化すれば通常の問い合わせ事項も類型化しておけば、ホームページからのアクセスで80%は解決するはずだ。この流れを捉え早急に対応する事が求められている。
10年一日のごとく、前例踏襲型ではいけない。不動産業界も今日の勝者は明日の敗者になる可能性も出てきた。アナログの最たる業界であったが、ここ数年の動きは目を見張るようだ。
KKD(勘・経験・度胸)でいまだに通している業者も少なく希少種になってきた。神奈川県内で9000社もある業種も珍しい。県内人口が900万、5万人商圏から見れば多くて200社、拠点数でいえば1000拠点で十分だという事である。つまり、本来規制法規である「宅地建物取引業法」が業界の保護障壁になっているのだ。いずれIT重説(今までは対面にて資格者が説明する事が要件だったが、ネット上だけでもOK)が、一般化すれば今までの業界にある障壁は崩れていく。
すべてがネット上でやり取りされ、仲介業者自体の存続も危うくなってくる。不動産の産直よろしく、「貸主⇔入居者」「管理会社⇔入居者」しか成立しなくなるだろう。そこでは賃貸仲介手数料が賃料の一ヶ月となっているがそれも維持できないだろう。物件情報は県内で一か所もあれば十分で、そこにアクセスすれば希望の物件をいつでもどこでも取り出され、地域に散らばった拠点が物件の案内、現地での問題処理を担当する事になる。
ITでできないアナログ的な問題のみが主要な仕事になるから、従来の不動産会社は全く必要がないことになる。嘘のような話に聞こえるかもしれないが、視点を変えて周りを見るとコンビニが思い浮かぶ。
神奈川県下にコンビニは約3600店ある。それ以上に不動産業者があるという事自体がおかしいのだ。コンビニにないものはない。ただ「業法上、資格者の宅建士が常駐していない」点だけである。そこを賃貸に限り緩和すれば、明日からでもコンビニで不動産賃貸の仲介ができる事になる。コンビニ各社や楽天等ネット系の企業はそういう動きを水面下でしているのは公然の事実だ。
手ごわいコンビニは24時間営業、来店すれば日用品の買い物ができる強みがある。生き残り策を考えれば、コンビニができない部分、つまり力仕事になる。力仕事とはアフター(CS)や滞納処理で、案内も別に不動産会社ではなく、タクシー会社やネットで活用できる「UBAR」のようなもので代用可能だ。
勿論、運送業法という縛りを外すことが条件になる。10年もたたない内にこれらの事は常態化するはずだ。もはや「賃貸不動産業」という業態もなくなり、単なる情報提供会社で、残るは「物件管理会社」だけになるだろう。社員も住まい方の知識、建築知識、税務知識、金融知識が必須でコンサルティングと折衝解決力が求められる。
従来の経験や知識など陳腐化し変化対応できない社員・企業は淘汰される。この辺の危機感があれば間違いなく生き残れる。
松下幸之助が言うように「知恵のある社員は知恵を出せ!知恵のない社員は汗(行動)を出せ!
知恵も汗も出せない社員は去れ!」は60年前の言葉だが、今でも立派に生きている。常態を疑うというか、従来の延長線上での思考ではイノベーションは期待できない。
営業研修でよく言われる古典的喩えで「北極で冷蔵庫を売るには・・・?」「アフリカで暖房機を売るには・・・?」というものがある。これは担当者が表面的な現象で判断せず「工夫をしろ!」という事である。日常業務の中でも顧客からの無理難題を言われる事がある。そこで「できません!」と即答するのではなく、本当にできないのか?を頭を使い工夫しなければならないという事だ。
「ある商事会社の社員がアフリカに靴を売りに行った。一人の社員は誰も靴を履いていないので靴の販売は無理です!と本社に報告」また「ある社員はここでは誰も靴を履いていません!大変有望な市場ですと報告した」これも先の例にもれずよく出てくる話で、担当社員の心の持ち方を言っている。
確かに理屈は頭で理解できるだろう。現状をそのまま受け入れるのではなく「なぜだろう?」と疑うことが必要だ。
これは小職でも経験済だから、営業経験が全くなかった人間でも自信をもって言える。現役時代、ある地域の攻略を命じられた。上司からの指示は「畑と駐車場の地主に有効活用の提案をせよ!」だけだ。あとは自分で考えろ!という事で、一時やみくもに訪問したことがある。勿論、成果はでない、気持ちは滅入る!でバカ臭いから退職も何度か考えた。
コメツキバッタみたいに頭を下げるのではなく、相手から喜ばれるような夢のようなやり方はないか、考えたところ「そうだ! 資産家は節税に関心がある」と気が付いた!
節税をメインにした提案を問題解決型の営業手法とすれば相手も喜ぶし、拒絶もなくなると考えた。当時としてはそのような営業手法をとる住宅会社はなかったので、概ね好意をもって迎えられた。
その結果、1年6ヶ月でアパート13棟という受注に結びついた。解決策はいつでもどこにでもある。真剣に考えればブレークスルーは可能だ。
社長 三戸部 啓之