188号-2013.3.25  

[ 2013.3.26. ]

188号-2013.3.25  

FB092当社には例年、半年毎に行われる方針発表大会がある。始めて15年目になる全員参加の意見表明の場だ。今下期は12月を1月にずらして開催した。

営業部門と内勤部門に分け2日間おこなった。社員数も88名と大幅に増加したため営業部門は全体会議の後、2つの分科会に分かれ、夫々の担当役員が同席することにした。社長は全体会議で基調方針と市場動向と部門横断的対策を話し、各分科会を半分ずつ参加した。そして名称も「成果発表大会」に変更した。変更した理由は、今までの「プロセス管理重視」の誤解を解き、結果重視の姿勢を鮮明にすることにあった。

「プロセス管理」の重要性が言われて20数年経つが、当社では結果の良し悪しより、「こういう過程で●●した」という面ばかり強調され、結果から川上にさかのぼって原因を抉り出す困難さを避けていた嫌いがあった。過程での自分の努力のみを強調して、事の本質である「真の原因」の究明に欠けていた。一般に言われる「なぜを3回繰り返せ」をしないため問題点があいまいになり、次期も同様な結果になった。表層上の問題点を角度を変えて説明しているに過ぎず、改善には何も寄与していなかった。結果検証も充分ではなかった。それに、内容よりプロジェクターによる表現方法の巧拙のみ競っていた。

真の問題点を抉り出していない為、データを収集するにもそれに特化したデータではなく当たり障りのないデータで分析していて、表面上のきれいごとで終わってしまった。

そこから導き出されるのは、外部環境、競合や条件、他部門の「他責」であり、「自責」であっても「努力不足だった」「相手の変化を読み取れなかった」「人間関係が作れなかった」になってしまう。残念ながらそこには自撫しかなく、改善のハードルを越えた自己のステップアップもない。方針と結果の検証ができない抽象的な目標だから無理もない。さらに残念な事には、そういう社員は品質管理や方針管理に関する書籍を一冊も自ら読んでいないこともある。

サービス業、開発営業には社員の個性(外見、マナー、気配り、洞察力、好悪)で左右される比率が多く、中々標準化定性化できない点から、どうしても「体力、精神力、行動量」で指導する事が多かった。強制的な「まず量の確保」から締め付ける事が、スキルアップや成果に連動していたからだ。勿論この手法は「大量の脱落者」を見込んであり、そのチキンレースに残ったものだけが必要とされた。この古典的管理手法も未だにある程度の効果があり、かたくなにこれを実践している優れた業績を上げる会社は今もある。ある意味で驚嘆する会社だ。今ベストセラーの「ブラック企業」に該当するが、業績がいいし、そのどれもが有名企業や大手企業なのだ。そこの社員も「元気」だから首をかしげる。真似のできない普通の会社では、社員を簡単に解雇することができず、レベルアップのための教育費用や時間も低迷社員にかけざるを得ない。ある意味、障害物競走のようなものだが、その為にも最低限の数字を確保できる社員の業務マニュアルが必要となってくる。

勿論製造ライン上の定型化された仕事ではなく、顧客相手という曖昧で感情的な、しかも常に競合相手と比較される仕事では、そのプロセスも定型化されておらず、イレギュラーな場面で臨機応変な対応が必要になる。だから営業を主体としたサービス業種では様々な工夫と評価項目が必要になる。数量化できない経験値がものをいう事もある。

 

内勤事務職は、顧客と間接的に接触する立場であり、担当営業の壁、相手の表情や怒声も電話という壁に護られて何時でも逃げられる。よほど意識していないと「傍観者」に終わり、顧客の痛みや営業の痛みが理解できない。全員営業を標榜する当社でも積年の課題だが、今回の発表で一部社員がこの点を取り上げたことは大いに評価できた。

営業は顧客の評価に直面して常に「数字という責任」を負っているはずだが、未だに合格点を取れる社員は少ない。そこで本人の自覚を待つしかないわけだが、この発表大会が「有言実行の場」としての効果を期待していることになる。

効率という点からは、2日間の業務ストップと拘束する人件費はばかにならないが、今まで15年も続けている。悲しいかな、社長の指導力不足もありご覧のような会社に終わっている。

「パレートの法則」ではないが20%が会社に大きく貢献、60%がそれなりに、残り20%が足を引っ張る構図がある。言葉を変えれば20%が自分で計画を立て成果を検証し、60%は指示待ちでお膳立てが必要だからその範囲での成果は見込めるが、それ以上は期待できない。残りの20%は一々チェックし、指示を与え、結果を報告させ、また次の指示を与える。つまり体だけ必要で後は不要というレベルだ。そして体力の劣化に伴い動きも悪くなるから35歳以上は問題になる。当社ではこれを「賞味期限切れ間近社員」と言っている。「有効期限切れ」ではないから、本人の瞬発力に期待し「再有効活用」して欲しいものだ。

彼らは、外見は立派だがメタボ体質は間違いがない、挑戦よりも現状に甘んじるから、「もう一歩」がない。「他責というガス抜き」が必要なのだが、程度を間違えて自責ガスまで抜けると問題だ。最近は当社のレベルでも「単なるガス抜き」とは言えないくらい「前向きな意見」も出てきた。問題意識の捉え方が「経営者的思考」になっている。うれしい事だ。ガス抜き調整弁がうまく起動し、最後まであきらめない寛容さが必要だと今更ながら理解した。

我々の仕事が、肉体労働だとは思わないが、知識労働くらいに位置づけないと彼らの自尊心はくすぐれない。しかし彼らの殆どは知識労働の本質は「効率」ではなく「効果」にあるという点を忘れている。これは「100万部売れる本を100冊作るのも、100万部売れる本を1冊作るも売り上げは同じだが、手間は100倍違う」ということなのである。会社には、本来この100万部の本を作る為のアイディアや知恵が求められている。勿論、早々にはこの手のヒットは出ないが、自分で考え続ける事が必要なのだ。その癖をつける事がこの成果発表大会の主目的だし、PDCA(計画Plan→実行Do→検証Check→改善Action)を回す事や小さな成功体験の積み重ねが、その発表により自信につながるはずなのだ。

ソフトバンクの孫正義社長は、自社の状況を知る為に、1000種類の指標を作り出し、グラフ化し、それを「千本ノック」と称した。普通の企業でも50や100は作っているかもしれない。しかしそれだけの指標では、本当に分析したことにならない。1000個やってみて、はじめてどこに問題があり、どこを直すかが分かるからだ。ジャンボジェット機の計器が200~300といわれているので、まるでスペースシャトルの様な計器類の多さになる。数はともかくとして、各指標から目をそらして経営するというのは、パイロットが目隠しして飛行機を操縦するのと同じだし、「どんぶり勘定」と同じだと言っている。あの天才経営者でさえ、自らの点検指標を人の何十倍も持っているのに、私を含めた「若年寄・凡人」が数個の指標で難渋しているのは、さすがに問題になる。「なぜを何回繰り返すのか」を言っているわけだ。「人生いろいろ」だが、「豊かな生活を目指す」事が一家の大黒柱としての当社社員の責任である。古いようだが、振り返った人生が

「大変だったが、充実した人生だった」と家族に言えるようになりたい。   

                                                社長 三戸部啓之