278号-2020.9.25

[ 2020.9.1. ]

278号-2020.9.25

第32期下期成果発表・第33期上期方針発表が終わった。当社の半期に一度のイベントになり、半期毎の成果を出し、成果をふまえた以後の半期分の指針を分析・発表するものだ。

お陰様でグループ全体の売り上げは前年の同期比109.9%、営業利益で94.4%、増収減益で終わった。
販売管理費が102.5%の4485万の増加であるのが問題として残されたが、通期では昨年対比で売上111.0%、営業利益134.1%の増収増益だった。これは社員の努力の結果であるが、低金利下の経済情勢やインバウンドによる不動産投資の影響で追い風を背に受けたものもある。

売り上げの内容も土地やマンションの売買仲介で伸びたのではなく、管理戸数が伸びた点や賃貸仲介が大きく寄与した点が大きい。仲介件数もコンスタントに年間2000件を超えてきたし、経費節減効果もあった。これを受けての方針発表になったわけであるが、その内容となると益々諸手を上げて喜べないレベルだった。成功した要因の分析もせず、まして未達の要因分析もなく、単に上っ面の理由でおしまいだった。これでは、前期の実績がキチンとした現状分析の上に立った行動指針の上の結果だとは到底思えない。外部的要因でたまたまラッキーな形で業績につながったと見ざるを得ない。

今後コロナウィルス感染の拡大が大きく業績に響いてくると予想され、5月以降企業の業績は徐々に悪化してきた。緊急事態宣言による外出規制により、飲食業をはじめ様々な業種で売り上げ激減による倒産が起こってきた。当社で管理している物件の入居者からも、賃料が払えないという家賃補助申請が40件を超えた。管理している店舗からも賃料減額の要望が来ている。世の企業がこぞって四苦八苦している中で当社だけが無傷というわけには常識的にみてもありうるはずがない。
だからこそ、半期の方針も事態の推移を踏まえて立案し、過去の問題点をきちんと把握し改善しなければならないのだ。自分の足元の問題としてとらえ行動計画を立てる必要がある。

そもそも方針管理とは、「社長」⇒「事業部長」⇒「課長(係長)」⇒「主任」⇒「一般社員」と下位職に行くほどより具体的な方針にならなくてはならない。そしてその分析手法としてはPDCAサイクルが必要となる。それが残念ながら全くできていないのだ。海図もなく航海し、乗る船も今度の航海に耐える強度と素材の点検、予定航海日数に応じた食糧、備品の備えもなく、気合だけで出帆するようなもので、危険極まりない。目的を達成するどころか、目的地に到達する事も危うい。危機管理の備えもなく、当たって砕けろ!とばかりの無謀というそしりを逃れない。その程度の方針管理でこの未曽有の危機を乗り越えることはできない。

賃貸管理課は滞納者の発生をどう食い止めるか?現状の滞納常習者が何名いて滞納額はいくらか?その方たちをどう退去にもっていくか?内勤事務が多い職場では、リモートワークをどう取り入れるのか?顧客サポート課は在宅勤務による騒音クレームの増加にどう対応するか、又どう減らすか?優良入居者にいかに長く入居してもらうか?当社でできる付加価値はないのか?入居者との非接触対応をどうするのか?仲介店舗は非接触型の現場案内や説明をどうするのか?契約行為を非接触型にするにはどうするのか?等々あり、社員の感染防止をどうするのか?万一感染者が出た場合の拠点対応はどうするのか?もある。
これらは、経営トップだけの問題ではなく個々人レベルで対応を考える必要があるのだ。それがこの期の最重要な行動指針になるはずだ。それを土台に売り上げや利益をどう確保するかが問われるのだ。更に前期の反省要因を子細に分析し再発防止に努めるとともに、未達要因を同じく因数分解し日常レベルに落とし込まなくてはならない。

成果・方針発表は20年近く開催しているが、どうしても観念的、情緒的な方針になりやすい。データに基づいての具体的な指針ではないのだ。結果から逆算した目標なのだ。目標設定にある昨年対比〇万とか、〇%アップとかがそれだ。これではデータに基づき現状分析した方針とは言えない。単なる数値合わせに過ぎない。市場分析もないし、競合対策もないから予防策とか対抗策が見えないことになる。出たとこ勝負で場当たり的運任せの仕儀になる。これでは経営の安定性は望むべくもないし、結果も心もとない。まさにK(経験)K(勘)D(度胸)の運営になる。気合も大事だが効率よく動かし、成果を上げるには単線的な動きではなく、複眼的複線的な計画立案が必要だ。
更に抜けていたのは自分の組織の現状分析がおろそかになっている事だ。部下のスキルやモチベーションの把握と維持、部下の個別的問題点と教育の具体的指針がなかった。動くのは部下である。最前線で戦うのも部下である。組織の長としての配慮が欠けていた点も見逃せない。

よく引き合いに出される話だが、旧日本軍は持たせる武器も天皇から貸し与えられたという「拝領」という観念を植え付けられ、モノに人格を付与され、ぞんざいな扱いには制裁が加えられた。資源の乏しい当時の日本では「モノは貴重品」で大事に扱うシグナルという意味では効果的だったが、それが日進月歩で開発進歩する戦時の中ではかえって開発や改良点を置き去りにした弊害が目立った。その不足を「大和魂」で補う事になり、前時代的な戦い方になった。ローテーションというものがないから一旦徴兵されると部隊が解散されるか、戦死するまで所属する事になる。前線部隊と後続部隊が定期的に交代するという兵事観念がないから疲労困憊しても放置され、戦闘力は衰えていった。

企業は戦闘組織である。部下や前線にすべてを押し付ける弊害は現在でも見られる。これが後方支援をなおざりにし、市場分析に基づいたターゲットを明確に指示しないから非効率的な動きになるし、効果的な武器開発(営業ツールや事務処理システム)がないから社員も疲弊する。

観念的な「地域密着を志向する」とは自社がそこにあるというだけではない。他社にない情報収集力、データの蓄積、きめ細かい顧客フォロー、相談体制の充実、価格優位性、サービス体制が必要だ。その地域だけに特化しているわけで、当然、大手よりも優位性がなければならないはずだ。リーダーはその点に焦点を合わせ活動指針としなければならない。

方針の出発点としてまず、自分の組織の現状分析が必須なのだ。自部門の兵力もわからず、持っている武器も不確かでは戦いようがない。それぞれの部下に合った指示や指針もある。
教育も必要だろう、適宜なローテーションも必要だろう。最善のコンディションに常に持っていくための緩急自在な組織運営も必要だ。これができるから「管理職」と呼称されるという理解をしてほしい。

「勇将の下に弱卒なし」年功序列で管理職に任命したわけではない。それなりの期待を込めて居るのだ。成果が出なければ交代もありうる。別に人格的に否定されたわけではないから捲土重来は可能だし、してもらいたい。ある意味「ゲーム性」の感覚があれば仕事の楽しみも増える。

管理職は「社長の代行」という意識を持ってもらいたいものだ。逃げが効かない、後がないという意識だ。

                                                                                             社長   三戸部 啓之